失業した離職者が再就職しやすいように資格取得を支援するシステムを「公共職業訓練」といいます。テキスト代など一部自己負担の教材などもありますが、失業保険を受給している人は無料で受講することができます。専門学校のように教室で受講するものから、泊まり込みで資格取得を目指す特殊な資格まで、いろいろな訓練の形態があります。
どんな資格でも自分で取得を目指すと時間もお金もかかるものですが、職業訓練の場合は、独学や通信講座の困難さや受講場所を探す手間もなく、国や地方から認定された訓練校での受講になので安心感があります。通信講座などでの資格取得に比べ、実地経験が積まれ、再就職に有利になるものが多くあります。
この職業訓練は、全国のハローワークが斡旋しています。
全国のハローワークが斡旋する職業訓練
職業訓練を受けるには、ハローワークで「訓練申込書」(「受講申込書」や「選考受付表」などと呼ばれるものもあります)に記入し、写真とともに申し込みをします。
申し込みする訓練によって、書類選考のみや面接・筆記試験などがあるものなど、選考基準は様々です。しっかりと訓練の内容や案内を確認しましょう。
どんな資格が学べるの?
「職業訓練」と聞くと建築関係の資格をイメージする人が多いようですが、ハローワークで斡旋する職業訓練には様々な業種の資格取得が目指せます。
例えばIT関連ではプログラミングやシステム・サーバ管理者関係の資格やWEBデザイン・グラフィックデザインなどもあります。パソコン操作が最低条件のようになりつつある昨今により高度な資格や知識は再就職するにあたり優遇されたり資格手当をもらえたりします。
また、医療事務や簿記検定など事務系の資格も取れます。これらの資格は独学ではなかなか取得しにくく、職種としては常に求人がある職種です。
手に職を、というタイプの資格もあります。女性に人気のエステティシャンやネイリストの資格も取れますし、調理師免許やパン職人など就職にも有利で、独立開業を見込める資格も多数あります。
もちろんイメージ通りの建築関係も多数あります。建築関係といっても力仕事ばかりではなく、インテリアコーディネーターやCADオペレーター(製図技師)の資格を取得すれば建築事務所などでのデスクワークやお客様へのプレゼンや営業などの仕事ができます。
林業や農業など知識やスキルを得ることもできます。後継者不足に悩む農業などは引く手あまたです。近年は法人格の農園なども増え、ひと昔前の土にまみれるばかりが仕事ではなくなっていますので学んでみると面白いかもしれません。
その他にも接客業や旅行・観光ガイド、イベントプランナーやマンションの管理人など「こんなものも学べるの?」という訓練も多数あります。
やりたい・就きたい仕事がなかったり、今までとは違う分野で再就職を希望している方にはもってこいのシステムが「職業訓練」です。
職業訓練で失業保険の給付制限がなくなる?受給日数も延長できるってホント?
ハローワークの規定の職業訓練を受けると、自己都合退社の場合でも給付制限が解除されすぐに失業給付が受給できます。
そして、職業訓練の受講期間は短いもので1か月、長いものになると1年に及ぶものもあります。その受講している期間の間、受給資格が延長され失業給付を受けることができるのです。
この受給日数の延長は、受給開始から数えるものではなく、職業訓練の受講を開始してからの日数になります。つまり、仮に約3か月90日の給付期間の途中から職業訓練を受けた場合、消化して残っている受給日数に職業訓練の期間がそのまま加算されます。
たとえば、90日のうち50日間自分で求職したが見つからないので90日職業訓練を受講したとします。通常であれば残りの受給日数は「90日―50日=40日」ですが職業訓練の日数が加算され、「90日―50日+90日=130日」となります。
職業訓練で受給日数を延長するための条件
しかし、この受給日数延長には条件があります。失業保険の受給日数の残りが31日未満だったり、過去1年以内に職業訓練を受けている人は受給日数の延長はできません。
ちなみに、職業訓練は残り日数が多い人、つまり離職してからの時間が経ってない人ほど優先的に受講資格を得ることができるようになっています。
受給資格延長のシステムを悪用しての不正受給はできない仕組みになっています。
失業認定の手間が省けたり手当がもらえるというメリットも!
職業訓練を受けるということは、それだけで再就職に向けての活動をしているということになります。このため、職業訓練以外の求職活動をしなくても基本的には失業認定は問題なく認定されます。
しかも、訓練を受講している間の失業認定は訓練校が一括して代理申請してくれますので、わざわざハローワークへ出向く必要もなくなります。基本的に、というのは、この失業認定を受けるためには訓練校でハローワークの定めた出席日数を満たすことが条件だからです。申し込むだけ申し込んで後はなにもしない、なんてことのないようにきちんと規定が設けられています。また、この出席日数をクリアしないと受給日数の延長も認められなくなります。
さらに、訓練校までの交通費や家族と別居して訓練を受ける必要のある場合などの寄宿費も手当として給付されます。受講している期間は、上限40日という条件付きですが一日あたり500円の受講手当も支給されます。
資格が無料で取得できて、各種手当が基本手当に加算されて、さらに受給日数が延長できる「職業訓練」は、新しいスタートを切る準備として利用してみるのも損どころかプラスになることが多いシステムです。もし使えそうなら、これは使わないと損ですよ。