再就職手当は、失業保険(基本手当)を受けている人が早期に再就職した場合に支給される給付金で、条件を満たせば最大で所定給付日数の70%分が支給される非常にありがたい制度です。
しかし、近年多くの人が利用している「タイミー」などのスキマバイト系サービスを通じて仕事を始めた場合、この再就職手当の受給資格を満たさないケースが増えています。この記事では、タイミー経由の仕事で再就職手当がもらえなくなる典型的なパターンや、よくある勘違い、対策について詳しく解説します。
再就職手当の基本条件をおさらい
再就職手当を受け取るためには、以下のような条件があります:
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基本手当の所定給付日数が3分の1以上残っている状態で就職する
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1年を超えて継続して雇用される見込みのある職に就く
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ハローワークに届け出た上での再就職である(事前に就職報告)
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自己都合や懲戒解雇などで離職した場合は待機期間満了後に再就職していること
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失業認定中の就職であること(認定前の就労は対象外)
これらを満たしていれば、基本手当の残り日数に応じて「再就職手当」が支給されます。
タイミー経由で失敗しやすいパターン
短期契約しか成立しないため「1年超の見込み」が満たせない
タイミーで紹介される仕事は基本的に1日単位~数日単位の「スポットバイト」です。そのため、どんなに働いても「1年を超えて継続して雇用される見込み」には該当しません。
「何度も同じ事業所で働いているから、実質的には就職では?」と思う方もいますが、雇用契約の形式が単発または短期であれば、ハローワークでは「再就職」とは見なされません。
就職報告を事前にしていない
再就職手当は、「就職してから報告する」のではなく、「就職が決まり次第、就業開始前にハローワークへ報告」することが原則です。タイミーでの仕事を重ねていくうちに、「これはもう再就職と言えるのでは?」と自分で判断し、後から報告しても時すでに遅しです。
事前報告がないと、たとえ雇用形態が長期契約であっても、再就職手当は受給できません。
開始日が失業認定日より前
再就職手当は、「失業認定日を経て以降」に就職した場合にしか支給されません。タイミーなどでの仕事を始めた日が認定日より前である場合、「失業状態ではなかった=受給資格なし」となってしまうのです。
特にありがちなのが、認定日前に短期バイトをしてしまい、失業状態が途切れたと判断されるパターンです。
雇用保険に加入しない働き方をしている
タイミーで紹介される仕事は、ほとんどが雇用保険適用外(1週間の所定労働時間20時間未満、31日以上の見込みがない)です。したがって、再就職手当の申請時に必要とされる「雇用保険に加入するような働き方を開始した」という実績を証明できないケースが多くなります。
仮に1カ月以上の長期契約が成立したとしても、労働時間が少ない、あるいは事業所側が雇用保険手続きをしていない場合は支給対象から外れます。
よくある勘違い
「働いてるから再就職したことになる」
繰り返しになりますが、「働く=再就職」ではありません。ハローワークの制度上、就職とは「安定した雇用関係に入ったこと」であり、単発バイトの積み重ねでは再就職手当の対象とはなりません。
「紹介先が“事業者”だからハローワークの紹介と同じでは?」
タイミーでの仕事は企業からの直接紹介に見えても、ハローワークの「紹介就職」にはあたりません。ハローワーク経由でない再就職でも再就職手当は申請可能ですが、「事前に就職報告をする」という手続きが必要です。
「将来的に長期契約になる予定だから申請できるはず」
たとえ将来の雇用継続の話があっても、現時点で1年を超える見込みが証明できなければ対象外になります。曖昧な「予定」や「口約束」だけでは支給要件を満たせません。
経験者から一言
私は実際に、タイミーで数カ月間コンスタントに働いていた時期があり、「これだけ働いていればもう再就職扱いになるのでは?」と思い、ハローワークに相談に行きました。
しかし、結論から言うと「就職にはあたらない」と言われ、再就職手当も申請できませんでした。労働時間が少なく、契約が単発である以上、どれだけ働いてもそれは「就労の一部」であって、「就職」とはみなされないというのです。
制度は複雑で理不尽に思えるかもしれませんが、ハローワークの基準は明確です。「再就職手当をもらいたい」と考えているなら、とにかく早めにハローワークに相談し、事前に条件を確認しておくことがすべてだと実感しました。
タイミーでの就労は生活の助けにはなりますが、「再就職扱い」にはならない点をきちんと理解し、賢く制度を活用していきましょう。