離職した会社役員は失業保険がもらえない?条件を満たせば受給資格を得られることも!?

平社員から努力して会社役員にまで昇進した。これはとても素晴らしい話です。そこまでの努力は数年のことではないでしょう。

そしてめでたく定年を迎え、退職したので失業保険をもらいながら再就職でもしようかと思ってはいませんか?

残念ながら、「会社役員」という役職に就くと離職しても失業保険の受給資格をもらえないのです。

会社役員は雇用保険に加入できない

そもそも「会社役員」とは、取締役や会社の三役である社長・専務・常務などの会社経営に関わる役職です。

これらの役職の収入は「給与」ではなく「役員報酬」です。労働に対しての対価ではありません。「会社役員」は労働者ではなく「経営陣」ですので、この役職に就いていること自体が「雇用ではない」のです。

「雇用ではない」ということはつまり、「雇用保険の加入資格がない」ということになります。

「失業保険給付の受給資格」は「離職した人」ではなく、「一定期間雇用保険に加入」し「雇用保険料を支払っていた」労働者ということが最低条件です。つまり、労働者でもなく雇用保険を支払っていない会社役員はそもそもにおいて「失業保険の受給資格を得ることはできない」のです。

「会社が倒産して、社長が失業保険をもらっている」なんて聞いたことありませんよね。

正社員から会社役員に昇進した場合は失業保険をもらえるケースも

しかし、失業保険受給資格の条件には、「離職した日からさかのぼった2年間に、賃金基礎になる日数(働いた日数)が11日以上あり、なおかつ雇用保険に加入していた月が12か月以上」というものがあります。

もし退職時は「会社役員」でも、退職する前の2年間に従業員として働き給与をもらっていて、雇用保険料が差し引かれている期間が1年以上あれば失業保険をもらえます。つまり、普通の「社員から昇進した会社役員」をしていた期間が2年未満であれば失業保険の受給資格があるのです。

会社倒産など会社理由の離職になると、会社役員になった期間の程度では支給制限期間もなくなる場合もあります。しかし、会社役員は基本的には会社の倒産などの場合は責任を負う義務があるため、よほど倒産する直前に他の経営陣に意図的に昇進させられたなどということが認められなければ難しいかと思われます。

もし失業保険をもらえそうな「役員在任期間」だった場合は、ハローワークに確認してみることをおすすめします。

また、この場合の離職票は通常の「被雇用者・労働者」としての期間のものですので、失業保険の給付額の基礎になる給与額も役員報酬の金額ではなく「被雇用者・労働者」としてもらっていた「給与の額」になります。

離職した職場以外に会社役員を引き受けている場合は?

一方、勤めていた職場とは別に会社役員を引き受けている方もいるでしょう。この場合、引き受けている会社役員には2つのパターンがあります。

一つは「役員報酬をもらっている」場合。もう一つは「役員報酬をもらわず」に役員をしている場合です。

前者の役員報酬をもらっている方は、収入がありますのでこちらは無条件に失業保険の受給資格をもらえないことは明白です。

後者の「役員報酬をもらわず」に役員を引き受けている場合は、一見無収入なので失業保険の受給資格を得られると思う方もいます。

しかし、「会社役員をしている」ということは、すなわち「会社を経営している」ということになりますので、事業者や経営者と同じ扱いになります。

つまり、役員報酬があってもなくても「現在進行形で会社役員をしている」ということは失業保険の受給資格は与えられません。

もし、務めている職場を離職して失業保険をもらいたいと思ったら、引き受けている役員も辞めなければならないのです。

「会社役員だけど失業保険をもらっている」だなんて、そんな話を聞いたらおかしいと思いますよね。「会社役員は経営陣であって労働者ではない」という事実を考えれば、何かおかしいと思った理由も理解できるはずです。

もし万が一、役員報酬から雇用保険料が支払われていたとしたら、それは経理が間違いです。役員報酬から雇用保険が差し引かれていたとしても、失業保険が受給できるわけではありません。役員報酬の明細書を確認してみて雇用保険料が差し引かれているようなら、そちらは役員報酬を支払っている会社への返還要求ができます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加